CAEソフト導入支援ガイド【CAExplorer】 

CFD解析とは?

基本概念と仕組み

CFD(Computational Fluid Dynamics)は、流体(空気や水など)の流れをコンピュータ上で数値的に解く解析手法です。流れ場は、ナビエ・ストークス方程式に代表される「質量・運動量・エネルギーの保存則」に基づいて記述されます。CFDでは、これらの方程式を計算できる形に離散化し、条件を与えて解くことで、速度や圧力、温度などの分布を推定します。

一般的なCFD解析の流れは、次のように整理できます。まず対象形状の3Dモデルを用意し、計算に使う空間を小さな要素に分割するメッシュ(格子)を作成します。次に、入口流速や出口圧力、壁面条件などの境界条件、材料物性、乱流モデルなどを設定します。その上でソルバーが反復計算を行い、最後に結果を可視化して流れの特徴や課題を読み取ります。目的に合わせて、モデル化の粒度と計算コストのバランスを取ることが重要です。

CFD解析の主な手法と特徴

CFDで支配方程式を解くためには、連続体の式を離散化する数値手法が必要です。代表的な手法には、有限体積法(FVM)、有限要素法(FEM)、有限差分法(FDM)、格子ボルツマン法などがあります。それぞれの考え方や得意領域が異なるため、対象と目的に合わせて選びます。

  • 有限体積法(FVM):各セル(体積)で保存則を積分して解く考え方で、産業界の流体解析で広く利用されます。流量保存を扱いやすく、複雑形状にも対応しやすいのが特徴です。
  • 有限要素法(FEM):要素上の近似関数で場を表し、弱形式で解く手法です。構造解析でよく使われますが、流体でも多物理場連成などで活用されます。
  • 有限差分法(FDM):格子点上の差分で微分を近似する手法で、比較的実装がシンプルです。規則格子との相性が良く、基礎研究や教育用途でも扱われます。
  • 格子ボルツマン法(LBM):粒子の分布関数の時間発展として流れを表現する手法です。並列計算と相性が良い一方で、適用範囲やモデル選択に注意が必要です。

なお、手法の違いだけでなく、乱流モデル(RANS、LESなど)や圧縮性の扱い、熱や化学反応の有無といったモデル選択も、結果の信頼性と計算負荷に大きく影響します。

CFD解析の活用分野

CFDは、試作回数の削減や設計の早期検討に役立つため、さまざまな分野で活用されています。設計の初期段階で傾向をつかみ、必要に応じて実験や実機評価と組み合わせることで、意思決定の精度を高められます。

航空宇宙・自動車分野での活用

航空機では、翼周りの流れを解析して揚力・抗力の予測や失速リスクの検討に利用されます。自動車では、車体周りの外部空力解析により、燃費や走行安定性に関わる空気抵抗の低減を狙います。また、近年は電動化に伴い、電動モータやバッテリの熱管理(冷却流路の最適化、温度分布の評価)でもCFD解析が使われています。

エネルギー・医療・環境分野での活用

エネルギー分野では、配管・タンク内の流れや熱移動の評価、燃焼器や熱交換器の設計検討などに活用されます。水素関連では、供給・貯蔵・利用の各工程での流体挙動をモデル化し、損失や安全性の検討材料にするケースがあります。医療分野でも、血流シミュレーションや薬物送達の解析などで流体モデルが用いられます。環境分野では、汚染物質の拡散評価や、建築物周辺の風環境(いわゆるビル風)の解析により、対策の方向性を検討できます。

CFD解析の導入に必要なソフトウェアと環境

CFD導入では、解析ソフトウェアの選定と、計算を実行するためのハードウェア環境の整備がポイントになります。ソフトは機能だけでなく、サポート体制、社内の運用スキル、連成解析の必要性なども含めて検討すると現実的です。

  • Ansys Fluent:産業界で利用が多く、乱流・熱・多相流など幅広い機能を備える商用ソフトです。大規模解析や周辺ツール連携を重視する場合に候補になります。
  • OpenFOAM:オープンソースで、ソルバーやモデルのカスタマイズ性が高いのが特徴です。運用には一定の知識が求められます。
  • COMSOL:多物理場シミュレーションに強く、流体と電磁場、構造などの連成を検討したい場合に有力です。
  • Creo Flow Analysis:CAD統合型で、設計プロセスの中で素早く傾向をつかみたい場合に使われます。

計算機(ワークステーションなど)の選定では、計算規模に応じたメモリ容量がまず重要になります。次に、最新世代のマルチコアCPUの性能、GPUを活用できるソフトかどうか、そして入出力が多い場合はSSDなど高速ストレージの採用も効果的です。運用の初期は小規模モデルで試し、必要な計算時間と精度のバランスを見ながら段階的に拡張する進め方が現場に適しています。

まとめ

CFD解析は、流体の挙動を数値シミュレーションで予測し、設計最適化やコスト削減に貢献する技術です。目的に応じて手法やソフトウェアを選定し、計算機環境を整えることが重要です。まずは小規模な解析から始め、実験や実機評価と組み合わせながら活用範囲を広げると判断しやすくなります。

目的別
CAEソフトおすすめ3選

開発のどの場面で何を達成したいかに合わせて、CAEソフトを整理しました。設計時の工数削減、開発初期の方向付け、信頼性確保。フェーズごとのやりたい検証にフィットするソフト選びにお役立てください。

開発上流での高速な
複数案検証・当たり付け
シムスケール
SimScale
画像引用元:SimScale公式HP
(https://simscale.kke.co.jp/)
分散・並列実行で解析
を高速化

構造・流体・伝熱・電磁界解析をブラウザ上で完結。192コアが利用可能かつ、数百以上の並列計算により、高速で複数案の同時検証が可能。

上流での即時検証と連携
が可能なクラウド設計

非専任でも扱いやすいUIと、ブラウザ上で、⾮専任者でも即座に上流検証へ着手できる設計。設定や結果は、安全なワークスペース内で共有でき、解析専任者とのレビューもスムーズに連携。判断のスピードを損なわない運用を実現する。

AIとサロゲートモデル
構築による効率化

AIが解析設定作業をサポートし、非専任者でも迷わずに解析フローを進められる。また、サロゲートモデルを構築することも可能であり、設計〜評価プロセスの効率化を実現する。

CAD・CAM一体化による
手戻り抑制・内製効率化
オートデスク フュージョン
Autodesk Fusion
画像引用元:Autodesk Fusion 公式HP
(https://www.autodesk.com/jp/products/fusion-360/overview)
開発ツールの統合で
手戻りを防ぐ

CAD/CAM/CAE/PCB/PDMなど、複数の開発ツールをひとつに統合。モデリングから製造準備までの流れが一貫され、データ変換やツール間の切り替えによる手戻りを防ぐ。

設計段階で性能と信頼性
を検証

構造解析や熱解析、モーション解析などのCAE機能を標準搭載。モデリングしたデータをそのまま使って解析でき、設計段階で強度・熱・動作をすばやく検証できる。

設計業務を効率化するAI搭載

ジェネレーティブデザインや図面自動生成などのAI支援機能を搭載。繰り返し作業を自動化し、形状提案や図面出力を短時間にし、スピーディーに回せる内製開発を支援。

詳細設計〜最終判断のための
高精度再現・相関確保
アンシス
Ansys
画像引用元:Ansys公式HP
(https://www.ansys.com/ja-jp)
信頼性の高い解析精度と
品質保証体制に対応

ISO 9001認証に基づく品質管理体制のもと、原子力・航空・自動車などの厳格な規制環境にも対応。社内検証、法規認証、顧客提出に耐える解析精度と信頼性を担保。※1

高度なマルチフィジックス解析に対応

構造・流体・熱・電磁場・音響など、複数の物理現象を連成解析できるマルチフィジックスCAE。非線形や疲労、衝突、安全試験相関など高精度が求められる現象を再現し、実験データに基づいた設計検証を支援。

高負荷解析を支える
HPCとクラウド環境

Ansys Cloudにより、大規模・非線形解析をクラウド上で高速実行。オンプレミス環境との併用が可能で、計算リソースの柔軟な拡張が行える。

※1参照元:Ansys公式サイト(https://www.ansys.com/ja-jp/company-information/quality-assurance