線形解析を日常的に使うCAEユーザーにとって、非線形解析の要否判断は迷いやすいポイントです。3つの非線形性を軸に基礎知識と判断基準を整理します。
線形解析は荷重と変位が比例する前提の解析手法です。FEMの基本式{F}=[K]·{U}において [K]が一定で、つり合い計算を1回行うだけで解が求まります。
非線形解析では変位に応じて剛性が変化し、式は{F}=[Kt(U)]·{U}です。
変形のたびにつり合い計算を繰り返すため計算時間は長くなりますが、実現象をより正確に再現できます。
多くのCAEツールは線形解析中心で運用されており、非線形解析を選ぶべき場面の見極めが設計者には欠かせません。
※F:荷重 U:変位量 K:剛性
非線形解析が必要となる要因は、材料非線形・幾何学非線形・境界条件非線形の3つです。
材料非線形は応力-ひずみ関係が非線形になる現象です。金属材料は弾性変形領域でヤング率に従い比例関係を保ちますが、降伏応力を超えると塑性変形に入り比例関係は成り立ちません。線形解析を適用すると応力値が過大に・変形量が過少に算出されます。
ゴムなどの超弾性材料もS字カーブ状の特性を示すため、材料非線形として扱います。
幾何学非線形は変形に伴い部材の剛性が変化する現象です。変形前後でつり合い状態が異なる「大変形問題」と、形状が突然変化する「座屈問題」に分かれます。浅いアーチ形状で起こる「飛び移り座屈」は線形解析では再現できない代表例です。
境界条件非線形は荷重条件や拘束条件が変形に伴い変化する現象で、接触や摩擦が主な要因です。ゴムを固い床に押し付けると接触面積が拡大し反力の分布が変わるため、非線形性を考慮した解析が求められます。
フックの法則が成り立つ金属材料かつ微小変形の範囲内なら、線形解析でも十分な精度を確保できます。機械部品の強度評価はこの条件に該当するケースが大半です。
微小変形でも注意が必要な場面はあります。平板に面外荷重を負荷する形状では面内方向に反力が発生し、線形解析では変形量を過大に算出してしまいます。変形後の形状をイメージし、剛性変化の有無を見極めてください。
計算コストと精度のバランスも欠かせない視点です。線形解析で精度が足りる条件下では、コストを抑える判断が合理的といえます。
非線形解析は材料・幾何学・境界条件の3つの非線形性に対応し、線形解析では再現できない現象を扱える手法です。自身の解析対象にどの非線形性が影響するかを見極めることが、適切な手法選択の出発点です。
降伏応力を超える荷重が想定されるか、大変形や座屈が起こり得るか、接触を伴う構造か。こうした観点で非線形解析の要否を判断し、解析精度の向上につなげてください。
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