CAE・シミュレーションの統合プラットフォームであるSimcenterは、設計から性能評価までワンストップで対応できるソフト。
構造、流体、熱、音響、電磁界といった多領域のシミュレーションを行えるマルチフィジックス解析で、自動車・航空・重工業における設計評価や、振動・騒音・熱流体解析といったシステム設計を行うことができます。
このページを読む前に:Simcenterと「STAR-CCM+」の関係
「Simcenter」はシーメンスのCAE製品群の総称で、この中には用途別に複数のソフトが含まれます。たとえば3D構造解析が得意なSimcenter 3D、1DシステムシミュレーションのSimcenter Amesim、そして熱流体解析(CFD)に特化したSimcenter STAR-CCM+などです。
以下ではSimcenter全体の特徴に加え、CFD専用ソフトであるSTAR-CCM+の機能・対応業種・ライセンスを整理しました。

Simcenterは、ドイツのSiemens社が開発したCAEソフト。1Dシミュレーションを使用し、概念段階でシステム性能を予測・解析することができます。構造解析・音響解析・熱流体解析・機構解析・耐久/疲労解析・弾性機構解析・位相最適化などに対応。
3D CADと連携させることが可能である点も、Simcenterの特徴。3D形状ベースでのシミュレーションが行えるSimcenter 3Dでは、
任意のCADデータをインポートすることができ、有限要素や境界要素、流体力学、構造解析(マルチボディダイナミクス)などの各種解析を行うことができます。
設計モデルや測定データをもとに解析モデルを作成し、位相最適化を実行できるのが特徴。さらに、最適化結果を幾何形状として出力し、編集することも可能です。また、汎用構造解析CAEのNX Nastranと連携すれば、より自由度が高い次世代の形状を設計できるようになります。
Simcenter STAR-CCM+は、Simcenter製品群の中でも熱流体解析(CFD:数値流体力学)に特化したソフトです。CADによる形状作成から、メッシュ作成、条件設定、計算実行、結果処理、データ分析までを、ひとつのユーザーインターフェースで完結できます。
各工程で別のツールへデータを渡す必要がないため、ツール間の変換トラブルが起きにくく、解析の前準備にかかる手間を抑えられます。元はCD-adapco社が開発したソフトで、2016年にシーメンスが買収して現在の名称になりました。自動車のCFD分野では世界的に高いシェアを持つソフトとして知られています。
STAR-CCM+は「流体の流れ」だけにとどまらず、流れと連動する幅広い物理現象を1つのソルバーで扱えます。代理店の公開資料で確認できる主な対応範囲は次の通りです。
| 熱・流体 | 単相流・混相流、圧縮性/非圧縮性、固体熱連成、輻射、相変化(蒸発・凝縮・沸騰) |
|---|---|
| 混相流 | VOF法(気液界面)、オイラー混相、ラグランジュ混相、液膜、分散混相流 |
| 乱流モデル | RANS、DES、LES など |
| 音響・騒音 | 空力音響(直接騒音計算、ハイブリッド法、FW-H法) |
| 連成・その他 | 流体-構造連成(FSI)、DEM(離散要素法による粒子解析)、反応流・燃焼、電磁気、レオロジー(高粘性・粘弾性) |
SPH法(粒子法流体解析)など一部の機能はアドオンライセンスが必要ですが、主要な物理モデルは標準ライセンスで使えます。複数の物理現象が絡み合う「マルチフィジックス」を1つのファイル・1つの環境で扱える点が、STAR-CCM+の中心的な強みです。
「自分の業種で使えるのか」が気になる方向けに、実際の利用分野を整理しました。STAR-CCM+は流体や熱が関わる製品開発であれば、業種を問わず使われています。
| 自動車・輸送機器 | 車体の空力解析、EV電池の熱管理、車室内の空調(HVAC)、エンジン燃焼 |
|---|---|
| 航空宇宙・防衛 | 機体まわりの空力・熱解析、推進系の流れ解析 |
| 船舶・重工業 | 船体抵抗、プロペラまわりの流れ、大型機械の熱設計 |
| エネルギー | ヒートポンプ、熱交換器、タービン内部の流れ |
| 医薬・化学 | 粒子コーティング(DEM)、攪拌・混合プロセス |
| 食品・消費財 | 洗浄、乾燥、流動プロセスの再現 |
Simcenterには広範なモデリング機能が搭載されており、1D・2D・3D要素のメッシュの手動生成はもちろん、自動生成にも対応。
形状編集やメッシュ生成、境界条件のユーザー定義を基本設計に関連付けることができ、変更があればすべて自動で更新されます。
これにより、モデリングに費やす時間を大幅に削減することが可能です。
解析モデルの形状編集やメッシュ作成、FEアセンブリ管理、マルチCAEソルバー環境、ポスト処理、レポート機能などを標準搭載。
これらを活用することで、CADデータをもとにした解析モデルを作成でき、モデル準備に費やす時間を軽減できます。
特定の基準を満たす設計を、検索する機能が搭載されているのも特徴のひとつ。これにより、使用材料を抑えながら目標とする性能を満たす製品設計が可能になります。結果として、製品の信頼性や性能の向上が期待できるでしょう。
公式HPに記載がありませんでした。
目的に合わせて選ぶ、
自社に合うCAEソフト
CAEソフト選定の鍵はスペックではなく、開発のどの場面で何を達成したいかです。上流での当たり付けか、詳細設計での精度確保か。フェーズごとの「やりたい検証」にフィットするCAEソフトを整理しました。
Simcenter全体としての導入事例は公式HPにまとまった記載がありませんでしたが、STAR-CCM+についてはシーメンスが公開している事例があります
| AOTECH社 (モータースポーツ) |
フォーミュラEカーのフロントウイング開発で、2億セル規模のCFD解析を128コアのクラスターで実行。空力データを共有しながら、ウイング開発プロジェクトを2カ月で予定通り完遂した。 参照元:Siemens公式 事例ページ(AOTECH社) |
|---|---|
| Ecurie Aix (学生レーシングチーム) |
EV電池の熱管理で、1DのSimcenter AmesimとSTAR-CCM+を連成。バッテリー冷却システムの設計を自動化し、トラックテストの時間とコストを削減した。 参照元:Siemens公式 事例ページ(Ecurie Aix) |
| ThermoLift社 (ヒートポンプ開発) |
燃焼・放射・対流・移動領域が絡む複雑な熱伝達を解析。シミュレーション主導の開発を進め、建物の冷暖房エネルギー消費を30〜50%削減する設計に貢献した。 参照元:Siemens公式 事例ページ(ThermoLift社) |
Simcenter(STAR-CCM+を含む)の具体的な価格は、公式HP・代理店ともに公開しておらず問い合わせが必要です。ただし、検討段階で押さえておきたいライセンスの種類については、代理店資料やシーメンスの公開情報から把握できます。
| 料金形態 | 新規契約はSubscription(サブスクリプション/レンタル)契約が基本。永久ライセンスや期間限定ライセンスなど、契約形態は複数あります。 |
|---|---|
| 費用 | 公式HP・代理店ともに非公開。利用目的・必要ライセンス数・サポート内容によって変わるため、見積もりが必要です。 |
| オプション費用 | CADクライアントや、設計探査・最適化ツール(HEEDS)などはアドオンライセンスとして別途必要になります。 |
STAR-CCM+は、使い方や計算規模に応じてライセンスを組み合わせる仕組みです。代表的なものは次の通り。
| Serial Session | シングルコアで実行する基本ライセンス。1ワークステーションでの利用向け。 |
|---|---|
| Power Token | 並列計算用に1コアずつ追加するトークン。10トークンでプリポスト機能が利用可能。設計探査の同時計算にも使える。 |
| Power Session | CPU並列無制限を、年間の固定費で使えるライセンス。コア数の多い計算をよく回す場合に向く。 |
| Power Session Plus | CPUに加えてGPU並列も無制限で使えるライセンス。 |
| Power On Demand | 時間課金制。ジョブ数・並列数が無制限で、ライセンスサーバーはクラウドを利用。一時的に大規模計算をしたい場合に向く。 |
計算の頻度や規模が決まっていない段階では、自社の使い方に合うライセンスの組み合わせを代理店と相談しながら決めるのが現実的です。
シーメンスの拡張サービスを利用することで、カスタマーサポートプランを強化することができます。幅広いサポートオプションを
提供しており、専用リソースが必要なユーザーのサポートリクエストにも柔軟に対応しています。
Simcenterをはじめとするソフトを導入するユーザーに向け、Siemens Xcelerator Academyによるトレーニングを提供しています。トレーニングはユーザーに合わせてカスタマイズされたオンデマンド、バーチャル、対面式を用意。DXへの取り組みを、専門知識で
サポートします。
STAR-CCM+については、IDAJなどの国内代理店が初心者向けの2日間コースを用意しているほか、スーパーコンピュータ「富岳」上での利用実績もあります。導入後の習得や大規模計算への発展も含めて、相談できる窓口が国内にある点は検討材料になります。
| メーカー名 | Siemens Digital Industries Software |
|---|---|
| 販売会社 | 国内では株式会社IDAJ、電通総研などが取り扱い。 |
| メーカー公式HPのURL | https://plm.sw.siemens.com/en-US/ |
開発のどの場面で何を達成したいかに合わせて、CAEソフトを整理しました。設計時の工数削減、開発初期の方向付け、信頼性確保。フェーズごとのやりたい検証にフィットするソフト選びにお役立てください。
構造・流体・伝熱・電磁界解析をブラウザ上で完結。192コアが利用可能かつ、数百以上の並列計算により、高速で複数案の同時検証が可能。
非専任でも扱いやすいUIと、ブラウザ上で、⾮専任者でも即座に上流検証へ着手できる設計。設定や結果は、安全なワークスペース内で共有でき、解析専任者とのレビューもスムーズに連携。判断のスピードを損なわない運用を実現する。
AIが解析設定作業をサポートし、非専任者でも迷わずに解析フローを進められる。また、サロゲートモデルを構築することも可能であり、設計〜評価プロセスの効率化を実現する。
CAD/CAM/CAE/PCB/PDMなど、複数の開発ツールをひとつに統合。モデリングから製造準備までの流れが一貫され、データ変換やツール間の切り替えによる手戻りを防ぐ。
構造解析や熱解析、モーション解析などのCAE機能を標準搭載。モデリングしたデータをそのまま使って解析でき、設計段階で強度・熱・動作をすばやく検証できる。
ジェネレーティブデザインや図面自動生成などのAI支援機能を搭載。繰り返し作業を自動化し、形状提案や図面出力を短時間にし、スピーディーに回せる内製開発を支援。
ISO 9001認証に基づく品質管理体制のもと、原子力・航空・自動車などの厳格な規制環境にも対応。社内検証、法規認証、顧客提出に耐える解析精度と信頼性を担保。※1
構造・流体・熱・電磁場・音響など、複数の物理現象を連成解析できるマルチフィジックスCAE。非線形や疲労、衝突、安全試験相関など高精度が求められる現象を再現し、実験データに基づいた設計検証を支援。
Ansys Cloudにより、大規模・非線形解析をクラウド上で高速実行。オンプレミス環境との併用が可能で、計算リソースの柔軟な拡張が行える。
※1参照元:Ansys公式サイト(https://www.ansys.com/ja-jp/company-information/quality-assurance)