CAEソフト導入支援ガイド【CAExplorer】 

Ansys Discovery

Ansys Discoveryは、3D形状の作成・修正と、設計初期のシミュレーションを一つの環境で進められるアップフロントCAEです。GPUを活用し、主に構造・流体・熱の解析結果を形状や条件の変更に応じて更新します。アンテナの初期検討に使える電磁界機能、パラメータスタディ、トポロジー最適化も備えており、有望な設計案を早い段階で絞り込めます。

Ansys Discoveryの製品特徴

解析結果を待ってから設計を見直すのではなく、形状を変えながら挙動を確かめられるのがAnsys Discoveryの特徴です。設計者自身が早期に課題を見つけ、詳細解析へ進める案を選びやすい環境を提供します。ただし、最終的な検証に必要な解析精度や機能は、契約エディションや連携するAnsys製品によって異なります。

GPUを活用した
リアルタイムシミュレーション

Ansys Discoveryは、GPUネイティブのソルバーを使い、形状や境界条件を変更した際の解析結果をリアルタイムに更新します。構造・熱・流体などの傾向を設計作業の途中で確認できるため、計算の完了を待って一案ずつ評価する負担を減らせます。多数の設計案を初期段階で比較し、問題のある案を早めに除外したい場面で活用しやすい製品です。

形状作成から解析準備まで
一つの環境で対応

ダイレクトモデリングを備え、3D形状の作成だけでなく、読み込んだCADデータの修復や編集にも対応しています。AutoCAD・CATIA・SOLIDWORKSなどのCADデータを取り込み、解析に不要な細部の削除や形状変更を行って、そのままシミュレーションへ移れます。形状を直すたびにCADとCAEを往復する手間を抑えられるため、解析モデルの準備を含めて設計検討を素早く回せます。

初期検討から詳細解析へ
つなげやすいワークフロー

Discoveryで候補を絞り、より詳細な検証が必要なモデルをAnsys MechanicalやAnsys AEDT Icepakなどへ引き継げます。2026 R1では、形状準備やマルチフィジックス連携も強化されました。Discoveryだけですべての検証を完結させるのではなく、設計探索の速さと専門ソルバーによる詳細解析を使い分けるのが基本的な考え方です。利用できる連携機能やソルバーはライセンス構成によって異なるため、導入時に確認が必要です。

※参照元URL:Ansys Discovery 2026 R1製品アップデート(https://www.ansys.com/ja-jp/products/3d-design/ansys-discovery/product-updates)

Ansys Discoveryのおもな機能

Ansys Discoveryでは、3D形状を操作する画面上で、構造・流体・熱などのシミュレーションを実行できます。アンテナの初期検討に使える電磁界機能も用意されています。自動メッシュ生成や接触の自動検出により、設計者が解析準備に費やす作業を抑えやすい点も特徴です。対応機能はエディションや解析モードによって変わるため、必要な物理領域と精度を整理して選ぶ必要があります。

3DモデリングとCADデータ編集

新しい形状の作成に加え、外部CADから読み込んだモデルの修復・編集・簡略化ができます。フィレットや穴など解析に不要な形状を調整し、シミュレーションに適したモデルを作成可能です。解析結果を見ながら形状を直接変更し、変更後の挙動を同じ画面で確かめられるため、設計と解析を短いサイクルで繰り返せます。

構造解析・モード解析

荷重を受けた部品の応力や変形、固有振動数などを評価できます。リアルタイムに傾向を確認するExplore段階と、より高い忠実度で検証する段階を使い分けられる構成です。MAPDLを用いる高忠実度の構造解析には、Discoveryに加えて、Mechanical Pro、Mechanical Premium、Mechanical Enterprise SolverまたはMechanical Enterpriseのいずれかのライセンスが必要です。最終検証まで想定する場合は、解析内容とライセンス条件を事前に照合しましょう。

流体解析・熱解析

内部流れ・外部流れの可視化、圧力や流速の確認、固体内の熱伝導、流体と固体の熱移動を組み合わせた共役熱伝達解析などに対応します。2026 R1では、電流による発熱と熱流体を組み合わせるジュール加熱の機能も案内されています。冷却経路や筐体形状を変えながら、流れと温度の変化を早期に比較でき、詳細なCFD・熱設計へ進む前の案の選別に役立ちます。

※参照元URL:Ansys公式ブログ「What’s New in Ansys Discovery 2026 R1」(https://www.ansys.com/blog/whats-new-ansys-discovery-2026-r1)

電磁界解析

Discovery Enterpriseでは、高周波電磁界モデリングを使い、基本的なアンテナのコンセプトや配置を初期検討できます。詳細な電磁界解析や設計の妥当性確認にはAnsys HFSSを使います。Discoveryは候補を絞る初期検討、HFSSは詳細な解析と検証という役割分担です。電磁界解析は、構造・熱・流体のリアルタイム解析とは利用段階が異なるため、対応エディションと解析モードを契約前に確認してください。

パラメータスタディと
設計最適化

寸法や条件をパラメータとして変化させ、結果への影響を比較できます。感度や応答を調べる設計探索に加え、目標と制約条件に沿って材料配置を検討するトポロジー最適化にも対応。経験だけで形状を決めるのではなく、複数案を解析結果に基づいて絞り込めるため、軽量化と剛性確保など、相反する条件を検討する際にも活用できます。

目的に合わせて選ぶ、
自社に合うCAEソフト

CAEソフト選定の鍵はスペックではなく、開発のどの場面で何を達成したいかです。上流での当たり付けか、詳細設計での精度確保か。フェーズごとの「やりたい検証」にフィットするCAEソフトを整理しました。

Ansys Discoveryを導入する前に確認したい点

設計探索と最終検証の
役割を分ける

Discoveryの強みは、設計の早い段階で結果を見ながら案を比較できることです。一方、最終判断に必要な詳細検証は、Ansys MechanicalやAnsys AEDT Icepakなどへ引き継ぐ場合があります。どの段階までDiscoveryで行い、どこから専門ソルバーへ移すのか。この線引きを導入前に決めておくと、必要なライセンスと運用フローを整理しやすくなります。

※参照元URL:Ansys公式ブログ「What’s New in Ansys Discovery 2026 R1」(https://www.ansys.com/blog/whats-new-ansys-discovery-2026-r1)

エディションと追加ライセンス

2026 R1の公式インストールガイドでは、Discovery Pro・Discovery Premium・Discovery Enterpriseの3段階が案内されています。Proは形状作成と入門的な構造解析、Premiumはより高度なモデリングと構造・熱・流体機能、Enterpriseは共役熱伝達や電磁界を含む幅広いマルチフィジックスに対応する構成です。MAPDLを用いる高忠実度の構造解析にはMechanical系の追加ライセンスが必要で、高忠実度の電気解析・電気熱連成解析にはDiscovery EnterpriseとMechanical Enterpriseが必要です。機能構成は更新される可能性があるため、見積もり時に現行の対応表を確認してください。

GPUを含む動作環境

リアルタイム解析を使うには、対応する専用GPUが重要です。2026 R1の公式ガイドでは、Windows 11 version 23H2以降(Professional・Enterprise・Education)、またはWindows Server 2022・2025 Standard、64bitのIntel・AMDプロセッサ、16GB以上のRAM、32GBの空きディスク容量が基本要件として示されています。

Model段階にはOpenGL 4.6対応の専用グラフィックスカードと2GB以上の専用メモリが必要です。Explore段階とLiveGXソルバーには、Maxwell世代以降の専用NVIDIA GPUと4GB以上の専用メモリが最低条件で、Pascal世代以降・8GBが推奨されています。マイナーバージョン互換性のための最低ドライバーバージョンは528.33以上です。AMD GPUや非対応のNVIDIA GPUでは、Model段階を利用できてもExplore段階とLiveGXソルバーは無効になります。

Ansys Discoveryの口コミ・評判

公式サイトに掲載された導入事例から、利用企業のコメントを紹介します。いずれも個別企業の事例であり、同じ効果を保証するものではありません。

トヨタ自動車株式会社の事例

「リアルタイム CAE を導入することで、開発と生産準備に要する時間を短縮することが可能です。」

トヨタ自動車株式会社 エンジニア 鈴木 有紀氏

トヨタ自動車では、新製品の解析や生産ラインの問題解決にDiscoveryを活用しています。事例では、リアルタイムCAEだけで判断を完結させず、実現象や従来の解析手法と組み合わせて妥当性を検証している点も示されています。設計・生産準備の初期検討を速めながら、必要な確認工程は残す運用例です。

TECHFITの事例

公式ページに掲載されたコメントのうち、以下の1文を抜粋します。

“Discovery has made a profound impact on how we iterate quickly to create better products.”

TECHFIT CEO Mauricio Toro氏

日本語にすると「Discoveryは、より良い製品を生み出すために素早く反復する方法に大きな影響を与えました」という内容です。医療分野の製品開発を行うTECHFITのコメントで、設計変更と評価を短いサイクルで繰り返せる点が評価されています。

Ansys Discoveryの価格・ライセンス

Ansys Discoveryには、Pro・Premium・Enterpriseの3つのエディションがあります。製品紹介や無料トライアルは案内されていますが、具体的な販売価格は、[公式サイトに記載がありませんでした。]

料金形態 商用ライセンス。Discovery Pro・Premium・Enterpriseの3段階
費用 [公式サイトに記載がありませんでした。]
ライセンス方式 Floating、Shared Web、Named User Web。利用条件は契約内容により異なります。
無料トライアル 30日間の無料トライアルあり
学生向け Ansys StudentにDiscoveryを収録。教育・自己学習・授業・学生プロジェクト・デモ用途向けで、商用利用はできません。
追加ライセンス MAPDLを用いる高忠実度の構造解析にはMechanical系の追加ライセンスが必要です。高忠実度の電気解析・電気熱連成解析には、Discovery EnterpriseとMechanical Enterpriseが必要です。

無料トライアルでは、自社のCADデータを扱えるか、リアルタイム解析に必要なGPU環境を用意できるか、既存の詳細解析へ引き継げるかを確認すると導入判断に役立ちます。トライアルで利用できる機能やサポート範囲は、申し込み時に確認してください。

※参照元URL:Ansys for Students公式HP(https://www.ansys.com/academic/students)

Ansys Discoveryのサービス・サポート

課題に応じたAnsys Services

Ansys Servicesでは、コンサルティング・プロフェッショナルサービス、信頼性エンジニアリング、解析業務の自動化・カスタマイズを提供しています。個別製品の活用支援から、シミュレーションプロセスの評価、企業規模での導入、故障原因の分析、独自ワークフローの構築までが対象です。これらのサービスがDiscoveryの標準契約に含まれるかは、[公式サイトに記載がありませんでした。]依頼できる内容や費用は個別に問い合わせが必要です。

※参照元URL:Ansys Services公式HP(https://www.ansys.com/ja-jp/services)

チュートリアルと技術サポート

Discoveryの公式リソースページでは、初心者から経験者までを対象とした動画チュートリアル、製品・新機能の動画、ウェビナー、ホワイトペーパー、導入事例が公開されています。技術サポートはAnsysが直接提供する場合と、認定Ansys Support Providerが担当する場合があり、契約先によって窓口が異なります。無料のAnsys Learning Forumも利用できます。

日本語で対応する担当者の配置や受付時間については、[公式サイトに記載がありませんでした。]

※参照元URL:Ansysサポート公式HP(https://www.ansys.com/ja-jp/support)

Ansys Discoveryのメーカー・販売会社

メーカー名 Ansys(Synopsysの一部)
日本国内の公式窓口 Ansys Japan K.K.
国内拠点 東京・大阪・名古屋
販売・サポート Ansysまたは認定チャネルパートナー・認定Ansys Support Provider。契約先によって窓口が異なります。
メーカー公式HPのURL https://www.ansys.com/ja-jp/products/3d-design/ansys-discovery
※参照元URL:Ansysお問い合わせ先(https://www.ansys.com/ja-jp/contact-us)
※参照元URL:Ansysチャネルパートナー(https://www.ansys.com/ja-jp/partner-ecosystem/channel-partners)
目的別
CAEソフトおすすめ3選

開発のどの場面で何を達成したいかに合わせて、CAEソフトを整理しました。設計時の工数削減、開発初期の方向付け、信頼性確保。フェーズごとのやりたい検証にフィットするソフト選びにお役立てください。

開発上流での高速な
複数案検証・当たり付け
シムスケール
SimScale
画像引用元:SimScale公式HP
(https://simscale.kke.co.jp/)
分散・並列実行で解析
を高速化

構造・流体・伝熱・電磁界解析をブラウザ上で完結。192コアが利用可能かつ、数百以上の並列計算により、高速で複数案の同時検証が可能。

上流での即時検証と連携
が可能なクラウド設計

非専任でも扱いやすいUIと、ブラウザ上で、⾮専任者でも即座に上流検証へ着手できる設計。設定や結果は、安全なワークスペース内で共有でき、解析専任者とのレビューもスムーズに連携。判断のスピードを損なわない運用を実現する。

AIとサロゲートモデル
構築による効率化

AIが解析設定作業をサポートし、非専任者でも迷わずに解析フローを進められる。また、サロゲートモデルを構築することも可能であり、設計〜評価プロセスの効率化を実現する。

CAD・CAM一体化による
手戻り抑制・内製効率化
オートデスク フュージョン
Autodesk Fusion
画像引用元:Autodesk Fusion 公式HP
(https://www.autodesk.com/jp/products/fusion-360/overview)
開発ツールの統合で
手戻りを防ぐ

CAD/CAM/CAE/PCB/PDMなど、複数の開発ツールをひとつに統合。モデリングから製造準備までの流れが一貫され、データ変換やツール間の切り替えによる手戻りを防ぐ。

設計段階で性能と信頼性
を検証

構造解析や熱解析、モーション解析などのCAE機能を標準搭載。モデリングしたデータをそのまま使って解析でき、設計段階で強度・熱・動作をすばやく検証できる。

設計業務を効率化するAI搭載

ジェネレーティブデザインや図面自動生成などのAI支援機能を搭載。繰り返し作業を自動化し、形状提案や図面出力を短時間にし、スピーディーに回せる内製開発を支援。

詳細設計〜最終判断のための
高精度再現・相関確保
アンシス
Ansys
画像引用元:Ansys公式HP
(https://www.ansys.com/ja-jp)
信頼性の高い解析精度と
品質保証体制に対応

ISO 9001認証に基づく品質管理体制のもと、原子力・航空・自動車などの厳格な規制環境にも対応。社内検証、法規認証、顧客提出に耐える解析精度と信頼性を担保。※1

高度なマルチフィジックス解析に対応

構造・流体・熱・電磁場・音響など、複数の物理現象を連成解析できるマルチフィジックスCAE。非線形や疲労、衝突、安全試験相関など高精度が求められる現象を再現し、実験データに基づいた設計検証を支援。

高負荷解析を支える
HPCとクラウド環境

Ansys Cloudにより、大規模・非線形解析をクラウド上で高速実行。オンプレミス環境との併用が可能で、計算リソースの柔軟な拡張が行える。

※1参照元:Ansys公式サイト(https://www.ansys.com/ja-jp/company-information/quality-assurance