CAEソフト導入支援ガイド【CAExplorer】 

CAEソフト導入の費用対効果

PRICE DECISION GUIDE

CAEソフトの価格をどう判断する?
3年間の総費用と導入効果で決める実践ガイド

CAEソフトには、価格が公開されているもの、問い合わせが必要なもの、無償で利用できるものがあります。しかし、表示された金額やライセンス費だけでは、導入後の支払総額まで分かりません。

比較すべきなのは、導入から運用までにかかる3年間の総費用と、その投資によって減らせる試作費、外注費、手戻り工数です。この記事では特定の製品を挙げず、予算の立て方から社内稟議まで、意思決定に必要な材料を順に整理します。

3年間TCO
ライセンス費だけでなく、環境・教育・運用まで合算する
同条件の見積もり
機能、人数、契約期間、支援範囲をそろえて比較する
導入効果
試作費・外注費・手戻り工数の削減を自社データで試算する
まず導入条件を整理する

01CAEソフトの価格は「いくらか」より「何が含まれるか」で判断する

CAEソフトの価格情報は、表示されている金額の対象範囲を確認して初めて比較に使えます。本体だけの価格なのか、必要な解析機能を含むのか、保守や技術サポートが別料金なのかで、実際の支払額は変わります。

  • 利用できる解析機能と追加機能
  • 利用者数と同時利用数
  • 契約期間と更新条件
  • 保守、問い合わせ、障害対応の範囲
  • 初期設定、データ連携、操作教育の費用
  • 計算用ハードウェアまたはクラウド利用料
  • 税込み・税抜きの区分と価格の基準日

価格が安く見えても、必要な機能や支援を追加した結果、総額が逆転することはあり得ます。反対に、多機能な構成を選んでも、実際に使う機能が限られていれば過剰投資です。「必要な解析を、必要な人数が、必要な頻度で実行できる構成か」を先に決めます。

公開価格・要見積もり・無償提供では比較条件が異なる

公開価格がある場合も、その金額が自社の導入総額とは限りません。機能構成別に価格が分かれ、ネットワーク利用や期間利用については別途問い合わせが必要な場合があります。

要見積もりの場合は、必要な機能、利用規模、契約期間、支援範囲を同じ書式で伝え、金額と内訳を確認します。候補ごとに異なる条件を伝えると比較できません。

無償提供やオープンソースの場合は、ライセンス費と総費用を分けて考えます。初期設定、計算環境、教育、保守、トラブル対応を自社で担うなら、その工数も費用です。

買取・期間利用・従量課金で費用の発生時期が変わる

調達方式は、方式名だけで有利・不利を決めず、同じ3年間に発生する費用へ置き換えて比べます。買取型は取得時の支払額に3年間の保守、更新、追加機能を加えます。期間利用型は各年の利用料、更新条件、中途解約や契約変更の条件を確認します。

従量型は、想定利用量と繁忙期の利用量を分けて試算します。クラウド計算環境を併用する場合は、計算時間だけでなく、契約期間、データ保存、データ転送などの条件も確認が必要です。

比較の着地点:すべての方式を年度別支払額と3年間の合計へ変換します。これなら、支払時期が異なる候補も同じ表で比較できます。

02見積もりを取る前に自社の導入条件を決める

見積もりを比較するには、発注側の要求条件をそろえておく必要があります。要件が曖昧なまま相談すると、各社が異なる前提で構成を提案するため、価格差が製品によるものか、見積条件によるものか分からなくなります。

見積依頼前に一枚へまとめる導入条件
項目 決める内容
解析目的何を判断するために解析するか
対象業務構造、熱、流体など、必要な解析領域
合格条件実験値との比較、社内基準、再現したい現象
利用規模利用者数、同時利用数、拠点数
利用頻度月間の解析件数、繁忙期、処理時間の希望
連携条件CADデータ、材料データ、既存システムとの接続
実行環境社内設備、クラウド、ネットワーク、セキュリティ
支援範囲初期設定、教育、問い合わせ、解析支援
導入時期評価開始日、本稼働日、契約期間

とりわけ重要なのが、どの結果が得られれば導入成功といえるかです。代表的な解析課題と合格条件をセットで定めておけば、トライアルやPoCでも同じ基準を使えます。

CAEは、ソフトを入れれば自動的に定着するものではありません。見積条件にも、誰が解析条件を作り、誰が結果の妥当性を確認し、知識をどう引き継ぐかを含めます。

03CAEソフトの3年間の総費用(TCO)を算出する

価格を比較するときは、初年度の支払額ではなく、一定期間の総保有コストであるTCOを使います。この記事では、契約更新や利用拡大を考慮しやすいように3年間で試算します。

基本式

3年間TCO = ライセンス・利用料 + 追加機能 + 計算環境 + 導入・連携 + 教育・社内工数 + 保守・サポート

ソフトウェア調達に関する公的ガイドラインでも、ライセンスだけでなく、ハードウェア、カスタマイズ、保守・更新、人材教育、データ移行を含めてライフサイクル全体の費用を評価する考え方が示されています。すべての項目が必ず発生するわけではありませんが、見積もりから漏れていないかを確認する枠組みとして使えます。

ライセンス費以外に含める費用

見落としやすいのは社内工数です。操作研修、解析手順の整備、既存データの移行も、担当者が本来の業務から離れる以上、導入費用の一部です。

TCOへ含める5つの費用区分
区分 主な費用
調達ライセンス、期間利用料、従量利用料、追加機能
環境ワークステーション、サーバー、クラウド、保存・転送
導入初期設定、データ移行、システム連携、検証
定着研修、マニュアル作成、標準手順の整備
運用保守、問い合わせ、更新、社内管理

初年度・平常年・利用拡大時の3シナリオ

  • 初年度:導入、教育、連携、評価を含む
  • 平常年:現在想定している人数と解析量で運用する
  • 利用拡大時:利用者、同時利用、計算量が増えた状態を置く

拡大時の想定は、希望的な利用計画ではなく、繁忙期や過去の外注件数を基に設定します。従量型を比較する場合は、平均利用量だけでなく、ピーク時の費用も分けます。

1ユーザー・1解析案件あたりのコストを求める

利用効率の確認

1ユーザーあたり年間コスト = 年間TCO ÷ 実際に利用する人数

1解析案件あたりコスト = 年間TCO ÷ 業務で完了した解析案件数

登録者数や起動回数ではなく、実際に業務へ使った人数と、判断に利用できる状態まで完了した案件数を分母にします。導入後も同じ式で確認すれば、利用不足と追加投資の必要性を見分けやすくなります。

04内製・外注・併用のどれが自社に適しているか

「ソフトを購入するか」だけが選択肢ではありません。内製、外注、併用を同じ比較表に置き、解析頻度、必要な専門性、機密性、回答までに許される時間、社内の維持負担を確認します。

現在の状況から比較に残す調達案
現在の状況 比較に残す案 追加で確認すること
定型解析が継続的に発生する内製、併用結果の妥当性を確認できるか、教育と環境を維持できるか
低頻度の特殊解析が中心外注、併用機密情報を扱えるか、納期と再解析費用を許容できるか
日常解析と高難度解析が混在する内製、外注、併用どの解析を社内に残し、どこから外部へ依頼するか
解析量をまだ予測できない小規模導入、評価利用、外注件数、必要機能、担当者の習熟負担をどう測るか

この表は方式を決めるものではなく、比較から早々に外さないための整理です。社内に妥当性を確認できる人がいなければ、内製しても結果を判断できません。外注する場合も、解析条件と結果を評価する担当者は必要です。

無償・オープンソースを含める場合:評価、導入・設定、連携、保守、運用、必要技能の確保や外部支援までTCOに含めます。

05導入効果を金額に置き換えて投資判断する

費用対効果は、一般的な削減率を当てはめるのではなく、自社の現状を基準に計算します。まず、導入前の一年間に発生した費用を集めます。

導入前のコスト

  • 試作品の製作費と試験費
  • 設計変更に伴う手戻り工数
  • 解析の外注費
  • 解析待ちによる業務停滞
  • 不具合対応や再検証の工数

投資判断に使う効果

金額にできる効果と、品質リスクの低減や設計知識の蓄積などの定性効果を分けます。効果を大きく見せないため、金額化の根拠も併記します。

効果の簡易試算

年間定量効果 = 削減できる試作・試験費 + 削減できる外注費 + 削減工数 × 社内時間単価

年間純効果 = 年間定量効果 - 年間運用費

この計算は、自社の候補案を同じ前提で比べるための簡易試算です。効果は「期待値」だけで決めず、保守的・標準・順調の三つに分けます。保守的な条件でも社内の投資基準を満たすか、満たさない場合はどの条件が変われば導入できるかを確認すると、稟議で説明しやすくなります。

06同じ条件で見積もりを取り、価格差の理由を比較する

複数の見積書を並べても、数量、契約期間、サポート範囲が違えば正しく比較できません。公的機関のソフトウェア調達仕様書でも、数量・規格、契約期間、サポート期間や対応内容、更新対応、見積もりに含める費用範囲が具体的に指定されています。民間企業が同じ仕様を使う必要はありませんが、比較条件を明文化する考え方は参考になります。

見積依頼書に記載する項目

  • ライセンス形態、数量、契約期間
  • 利用できる機能と追加機能
  • 初期設定、データ連携、移行作業
  • 教育の対象人数、形式、回数
  • 保守期間、問い合わせ方法、対応範囲
  • 計算環境やクラウド費用の前提
  • 更新価格、追加購入、解約条件
  • 税区分、見積有効期限、価格改定の扱い

「一式」とだけ書かれた項目は、その中身を確認します。初年度だけ含まれる支援や、次年度から別料金になるサービスも分けてください。

トライアルで検証する合格基準と撤退基準

トライアルやPoCが利用できる場合は、操作画面を触るだけで終わらせず、自社の代表的なデータと解析課題で試します。導入後に実際に使う人も評価へ含めます。

  • 必要な現象を扱える
  • 基準となる実験結果や既存結果と照合できる
  • 想定時間内にモデル作成から結果確認まで進められる
  • 既存データを無理なく受け渡せる
  • 別の担当者でも手順を再現できる
  • 問題発生時に必要な支援を受けられる

必須条件を満たせない場合、追加費用や教育で解消できるのか、それとも候補から外すのかも事前に決めます。評価基準は試行前に固定し、変更した場合は全候補を同じ基準で評価し直します。

07CAEソフトの導入可否を判断する

最終判断は「最も高機能な候補」ではなく、自社の課題を、許容できる費用と運用負担で解決できる候補を選ぶことです。

稟議資料の一枚目に載せる8項目

  1. 解決したい業務課題
  2. 現在発生している費用と工数
  3. 推奨する調達方法と選定理由
  4. 3年間TCOと年度別支払額
  5. 保守的・標準・順調の導入効果
  6. 主なリスクと対応策
  7. 導入スケジュールと責任者
  8. 導入後の評価指標

結論は「導入」か「見送り」の二択にしない

条件付き導入対象業務や利用者を絞り、小規模に始める
外注・併用特殊解析や高難度解析だけを外部へ任せる
保留要件、検証基準、人材が整うまで投資を待つ

導入後も同じ指標で更新判断する

契約更新の前に、実利用者数、完了した解析件数、外注費や試作費の変化、問い合わせ件数を確認します。想定より使われていないなら、追加購入より先に、教育不足、対象業務の設定、操作負担を見直します。利用が集中して待ち時間が生じているなら、追加投資を検討する根拠になります。

08CAEソフトの価格に関するよくある質問

価格が公開されていないのはなぜですか?

価格が公開されていない理由は、提供元へ確認しなければ分かりません。公開情報がないことだけでは高いか安いかも判断できないため、自社の要件をそろえて金額と内訳を確認し、3年間TCOで比較してください。

無償のCAEソフトなら導入費用はかかりませんか?

ライセンス費がかからなくても、計算環境、初期設定、教育、運用、障害対応の費用や社内工数は残ります。必要な技能を社内で確保できない場合は、外部支援費も見込む必要があります。

買取と期間利用はどちらが得ですか?

長期利用するから買取が必ず得、短期利用だから期間利用が必ず得とは限りません。保守、更新、利用者の増減、追加機能を含めた3年間TCOを比較してください。

見積もりは何社から取るべきですか?

社数だけを増やしても、条件が違えば比較できません。必要な解析要件を満たす候補に絞り、同じ要求仕様と費用区分で見積もりを取ることが先です。

価格が安いソフトを選ぶときの注意点は?

必要な機能が不足していないか、計算環境や追加機能が別料金ではないか、教育と技術支援を自社で担えるかを確認してください。価格の安さは、必須条件を満たした候補同士で比較して初めて意味を持ちます。

価格表ではなく、同じ判断基準を持ち続ける

CAEソフトの価格を判断する出発点は、相場を探すことではありません。自社の解析目的と利用条件を固め、3年間TCOと導入効果を同じ前提で並べることです。見積書、PoC、稟議、導入後の評価まで同じ基準を使えば、価格差に振り回されず、導入・外注・保留を判断できます。

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目的別
CAEソフトおすすめ3選

開発のどの場面で何を達成したいかに合わせて、CAEソフトを整理しました。設計時の工数削減、開発初期の方向付け、信頼性確保。フェーズごとのやりたい検証にフィットするソフト選びにお役立てください。

開発上流での高速な
複数案検証・当たり付け
シムスケール
SimScale
画像引用元:SimScale公式HP
(https://simscale.kke.co.jp/)
分散・並列実行で解析
を高速化

構造・流体・伝熱・電磁界解析をブラウザ上で完結。192コアが利用可能かつ、数百以上の並列計算により、高速で複数案の同時検証が可能。

上流での即時検証と連携
が可能なクラウド設計

非専任でも扱いやすいUIと、ブラウザ上で、⾮専任者でも即座に上流検証へ着手できる設計。設定や結果は、安全なワークスペース内で共有でき、解析専任者とのレビューもスムーズに連携。判断のスピードを損なわない運用を実現する。

AIとサロゲートモデル
構築による効率化

AIが解析設定作業をサポートし、非専任者でも迷わずに解析フローを進められる。また、サロゲートモデルを構築することも可能であり、設計〜評価プロセスの効率化を実現する。

CAD・CAM一体化による
手戻り抑制・内製効率化
オートデスク フュージョン
Autodesk Fusion
画像引用元:Autodesk Fusion 公式HP
(https://www.autodesk.com/jp/products/fusion-360/overview)
開発ツールの統合で
手戻りを防ぐ

CAD/CAM/CAE/PCB/PDMなど、複数の開発ツールをひとつに統合。モデリングから製造準備までの流れが一貫され、データ変換やツール間の切り替えによる手戻りを防ぐ。

設計段階で性能と信頼性
を検証

構造解析や熱解析、モーション解析などのCAE機能を標準搭載。モデリングしたデータをそのまま使って解析でき、設計段階で強度・熱・動作をすばやく検証できる。

設計業務を効率化するAI搭載

ジェネレーティブデザインや図面自動生成などのAI支援機能を搭載。繰り返し作業を自動化し、形状提案や図面出力を短時間にし、スピーディーに回せる内製開発を支援。

詳細設計〜最終判断のための
高精度再現・相関確保
アンシス
Ansys
画像引用元:Ansys公式HP
(https://www.ansys.com/ja-jp)
信頼性の高い解析精度と
品質保証体制に対応

ISO 9001認証に基づく品質管理体制のもと、原子力・航空・自動車などの厳格な規制環境にも対応。社内検証、法規認証、顧客提出に耐える解析精度と信頼性を担保。※1

高度なマルチフィジックス解析に対応

構造・流体・熱・電磁場・音響など、複数の物理現象を連成解析できるマルチフィジックスCAE。非線形や疲労、衝突、安全試験相関など高精度が求められる現象を再現し、実験データに基づいた設計検証を支援。

高負荷解析を支える
HPCとクラウド環境

Ansys Cloudにより、大規模・非線形解析をクラウド上で高速実行。オンプレミス環境との併用が可能で、計算リソースの柔軟な拡張が行える。

※1参照元:Ansys公式サイト(https://www.ansys.com/ja-jp/company-information/quality-assurance