CAE PARALLEL COMPUTING GUIDE
CAEの並列計算に使うコア数は、搭載されている数をそのまま指定する前に、普段の解析で効果を確かめましょう。選ぶ基準は、必要な時間内に計算を終えられるかと、増やしたコアに見合う時間短縮が得られるかです。
同じモデルでも、ソルバーや計算環境によって並列化の効果は変わります。まず使用できるコア数と設定の意味を確認し、条件をそろえてコア数を変え、採用する並列数を決めます。
物理コアはCPU内部の計算を担う単位です。SMTなどの機能により、一つの物理コアが複数の論理プロセッサーとしてOSに表示される場合があります。表示された論理プロセッサーの数を、そのまま物理コア数として扱わないようにしましょう。
比較を始める前にCPUの仕様を確認し、物理コア数と、ソルバーが利用する設定値を記録してください。論理プロセッサーを活用する設定の扱いは、利用中のソルバーの案内に従います。
並列計算には、メモリを共有して処理する方式と、分けられたメモリを使うプロセス間でデータをやり取りする方式があります。共有メモリ型(SMP)や分散メモリ型(DMP)と呼ばれますが、分散メモリ型でも1台のマシンで実行する場合があります。
製品によっては、プロセス数と、プロセスごとのスレッド数を組み合わせて並列数を指定します。設定画面の数字が何を表すか、マニュアルで確認しましょう。サーバーに搭載されたコア数に加え、ジョブに割り当てられた資源と、ソルバー・ライセンスの利用条件も確認が必要です。
並列計算では、すべての処理を均等に分担できるとは限りません。分担できない処理や、データをやり取りする時間があるため、コア数を増やしても実行時間が比例して短くなるとは限らないのです。
| 制約の候補 | 起きていること | 確認する情報 |
|---|---|---|
| 非並列の処理 | コアを増やしても分担できない工程が残る | 全体時間と工程別の所要時間 |
| プロセス間の通信 | 計算結果やデータを受け渡す時間がかかる | 並列方式、ノード構成、通信に関するログ |
| メモリ帯域 | メモリからデータを読み書きする速さが制約になる | CPU・メモリ構成と、コア数を変えたときの時間の変化 |
| ディスクI/O | ソルバーのメモリモードによっては、行列データなどの読み書きが負荷になる | メモリ使用量、ソルバーの動作モード、I/Oの状況 |
CPU利用率の表示だけで原因を決めず、取得できるログと、コア数を変えたときの所要時間を合わせて見ましょう。とくに、メモリ容量の不足と、メモリ帯域による制約は分けて調べたい点です。
PC自体を見直す場合は、コア数だけでなく、CPU・メモリ・ストレージを合わせて検討してください。
普段扱う規模のモデルを選び、現在の設定を基準にします。比較中は、メッシュ、材料、境界条件、ソルバー、収束条件、結果の出力条件を固定してください。計算機と並列方式もそろえ、コア数以外の変更を混ぜないようにします。
そのうえで、利用可能な範囲でコア数を段階的に増やします。たとえば4・8・16コアなどの候補を設け、改善が小さくなる範囲を探します。試す数は、使用できる物理コア数と契約条件に合わせて決めましょう。
比較するのは、開始から終了までにかかった経過時間(wall clock/elapsed time)です。各コアの処理時間を集計したCPU timeとは区別してください。計算部分だけの時間を測る場合も、すべての候補で同じ区間を使います。
ログに実行条件が出る製品では、指定した設定で動いていたかも確認しましょう。結果にばらつきがある候補は測り直し、評価に使う値や収束状況に問題がないかも確かめます。
測定結果がそろったら、短くなった時間と、使った計算資源を並べて判断します。実行時間が最も短い設定と、少ない資源で必要な時間内に終わる設定が、同じとは限りません。
コア時間 = 割り当てたコア数 × 経過時間(時間)
コア数を2倍にして経過時間が半分になれば、コア時間は同じです。半分まで短くならなければ、コア時間は増えます。短縮できた時間に対して、どれだけ多くの資源を使ったかを比べられます。
急ぎの解析なら、追加の資源を使ってでも期限に間に合う設定を選ぶ判断があります。時間に余裕がある定常業務なら、期限を満たす候補の中で、コア時間の少ない設定を選ぶことも考えられます。
コアを増やしても短縮がわずかで、測定のばらつきと区別しにくいなら、増やす前の設定を候補に残しましょう。費用まで比較する際は、計算機とソフトウェアの実際の契約・課金単位も確認してください。
一つのモデルで決めた並列数を、すべての解析へ固定する必要はありません。モデルの規模やソルバー、計算機の構成によって、コアを増やしたときの効果は変わります。代表モデルごとに測定条件と採用した設定を残し、次の変更があったときに再評価しましょう。
複数の解析を同時に流す運用へ変える場合も、1件だけを実行した測定結果に加え、実際の運用条件で確かめてください。1ジョブに割り当てるコア数と、同時に実行するジョブ数は別々に記録します。
並列数を調整しても改善が乏しいときは、前後の工程を含めて時間のかかる箇所を見直しましょう。形状準備、メッシュ、計算条件などの確認も必要です。
CAEの並列計算では、使用できるコア数と設定の意味を確認し、同じモデル・同じ条件で並列数を比較しましょう。経過時間とコア時間を残せば、時間短縮を優先する設定と、計算資源を抑える設定を選び分けられます。採用したコア数は測定条件とセットで管理し、モデルや計算環境が変わったら見直してください。
目的に合わせて選ぶ、
自社に合うCAEソフト
CAEソフト選定の鍵はスペックではなく、開発のどの場面で何を達成したいかです。上流での当たり付けか、詳細設計での精度確保か。フェーズごとの「やりたい検証」にフィットするCAEソフトを整理しました。
開発のどの場面で何を達成したいかに合わせて、CAEソフトを整理しました。設計時の工数削減、開発初期の方向付け、信頼性確保。フェーズごとのやりたい検証にフィットするソフト選びにお役立てください。
構造・流体・伝熱・電磁界解析をブラウザ上で完結。192コアが利用可能かつ、数百以上の並列計算により、高速で複数案の同時検証が可能。
非専任でも扱いやすいUIと、ブラウザ上で、⾮専任者でも即座に上流検証へ着手できる設計。設定や結果は、安全なワークスペース内で共有でき、解析専任者とのレビューもスムーズに連携。判断のスピードを損なわない運用を実現する。
AIが解析設定作業をサポートし、非専任者でも迷わずに解析フローを進められる。また、サロゲートモデルを構築することも可能であり、設計〜評価プロセスの効率化を実現する。
CAD/CAM/CAE/PCB/PDMなど、複数の開発ツールをひとつに統合。モデリングから製造準備までの流れが一貫され、データ変換やツール間の切り替えによる手戻りを防ぐ。
構造解析や熱解析、モーション解析などのCAE機能を標準搭載。モデリングしたデータをそのまま使って解析でき、設計段階で強度・熱・動作をすばやく検証できる。
ジェネレーティブデザインや図面自動生成などのAI支援機能を搭載。繰り返し作業を自動化し、形状提案や図面出力を短時間にし、スピーディーに回せる内製開発を支援。
ISO 9001認証に基づく品質管理体制のもと、原子力・航空・自動車などの厳格な規制環境にも対応。社内検証、法規認証、顧客提出に耐える解析精度と信頼性を担保。※1
構造・流体・熱・電磁場・音響など、複数の物理現象を連成解析できるマルチフィジックスCAE。非線形や疲労、衝突、安全試験相関など高精度が求められる現象を再現し、実験データに基づいた設計検証を支援。
Ansys Cloudにより、大規模・非線形解析をクラウド上で高速実行。オンプレミス環境との併用が可能で、計算リソースの柔軟な拡張が行える。
※1参照元:Ansys公式サイト(https://www.ansys.com/ja-jp/company-information/quality-assurance)